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2009年4月15日水曜日

『世界一あたたかい人生相談』

こないだ、『世界一あたたかい人生相談』という本を読んだ。
ふつうなら、ここでアマゾンのデータを差し挟むところだが、この本、アマゾンでは売っていない。

ビッグイシューという会社が版元である。
http://www.bigissue.jp/news.html

『ビッグイシュー』という会社あるいは雑誌は、都市近郊にお住まいの方ならご存知だろう。
ホームレス風のオジサンが駅前や街角で売っていたりしますが、あれですね。なかなか買うのに勇気がいるものなのですが……
「ビッグイシュー」は雑誌で、そもそもホームレスの社会復帰のために世界規模で発刊されている。売上げの約半分がホームレスの方の手間賃になるんだそうで。
創刊当時はあんま面白くなかったけれど、けっこう最近は面白い。とはいえ、ときどきしか買わないけれど。

で、こここの雑誌で名物コーナーであった「人生相談」をまとめたものが本書である。ついでに、枝元なほみさんという料理研究家が相談者に「こういうもん、食いなさい」とレシピが載っていたり、そこにキツイ一言が載っていたりして、なかなか楽しい。
この人生相談は、ま、ふつうの読者が「困ってます」とやるのだが、答えるのが、ビッグイシューの販売者の方、つまりは、ホームレスの方々である。実際には、ビッグイシュー販売のおかげでホームレス状態ではなくなっている人もいるのだが、ま、細かいところはよい。

ロジャーズの例の3条件の一つに、「自己開示」がある。傾聴、共感と並ぶ、大事なポイントとされる。傾聴や共感は、わかりやすいタームであり、できるか否かは別にして、お題目としてわかりやすい。しかし、「自己開示」というのは今ひとつわからない。上の二つについては同意しない学派は(といよりも人間は)いないだろうが、「自己開示」にはあまり触れられないような気がする。自己開示をキッパリと否定するような学派も存在しないでもない。

多くの人生相談において、回答者は「まあ、ワタシの話だけどね……」という感じで、自分の過去をさらりと語り、相談者との距離を詰める。この本でも同様で、帰宅拒否症のお父さんに対しては、「ああ、でも、きっとヨメさん、怒っていると思うよ、ハラの中で。ウチもそれで離婚しちゃってさ、あとは転落の人生……」みたいなことが語られる。これが自己開示なのだろうか。自己開示の一つなのだろうか。
よくわからないのだが、これがこの本においては、「あたたかい」と感じられるゆえんであろう。いや、ホントにあたたかいのだ。正直に言うと、相談者の方がきっと回答者よりもずっと「正しい」人間なのだろうと思うのだが、でも、ホームレスのオジサンたちの回答もやはり正しかったりする。普通に常識的だったりするのだ。どうしてホームレスになったのだろう……相談者の相談よりも、そちらのほうが気にかかる。
まあ、英国では7歳の人生相談が人気だというし。

うーむ。ともあれ、いろいろと考えさせられる本であります。本屋さんでも売っていますが、できれば街角でホームレスのオジサンから購入されることをオススメします。


感想のまとめ:
*自己開示って、ホント、何だろう。
*ホームレスのオジサンたちの「自己開示」を聞くと、ふつうの人である。どうして転落をするのか。よく言われることだが、家庭の守りがまったくないことは大きいと再確認。
*カウンセラーは、人生相談家なのだろうか???


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