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2009年3月25日水曜日

のびる

 
過日。
自宅には小狭い庭がついていて、大した園芸ができるわけではないのだが、それでも、雑草だけは生えるので、この時期から草むしりをたびたびする。好きでやっているわけではないが、嫌いな作業でもない。単純作業は時間の中に自分が埋没していく感じがしていて、そう悪い気分ではない。

この時期の楽しみはもう一つある。

のびる

である。
漢字で書くと、野蒜。「蒜」という字からわかるとおり、ニンニク(大蒜)というか、葱というか、韮というか、エシャロットというか、アサツキというか、ネギの仲間であることは確実の、そんな感じの野草である。
なぜか、そんなものが庭に生えているのである。この時期、基本的に枯れ草色のなか、一人青々としていて、すらりと伸びているので、すぐにわかる。生え際(というのか)がアサツキっぽく縦じわがついていて、ゆっくりと抜けば、「音符(♪)」みたいな感じで、根っこがついている。この時期だとまだまだ小さいが5月くらいになると、パチンコ玉より一回り小さいくらいの根がつく。球根なんだろうか。
最初は、ただの雑草だと思っていたのだが、抜いているとどうにもネギくさい。これがノビルなのだろうかと調べたら、まさにその通りであったというのが真相で、以来、庭だけではなく、けっこうあちこちに生えているのがわかった。街路樹の土のところにわんさか生えている一群があったりする。
ときどき居酒屋などでノビルがあることがあるが、そういうノビルよりも、一回り小さい。食べ方としては、この時期ならば、穂先まで丸ごと食せるが、もう少したつと葉のほうはかなり固くなるので、根だけを食べる。多少筋張ったところがあるので、湯がいたり炒めた方がよい。ネギの仲間の証なのだろうか、熱を通すとほくほくと甘みが出てくる。
湯がいた後、酢味噌でぬたにしてもよいし、マヨネーズと味噌であえてもよかった。そのまま鍋物に入れるという手もある。ニラ的なところがあるので、韓国風お好み焼きっぽくするのもよかった。

で、ノビルはあるとき忽然と姿を消す。夏の前になると花(葱坊主の小型版でなかなか可愛い)をつけるのだが、それを潮に、なくなってしまう。1月くらいまで、それきり姿を現さない。根のなかでじっくりと暑い時期をやり過ごしているのだろうか。ネギの仲間はユリ科の植物だそうだから、ノビルにはノビルの球根戦略みたいなのがあるのだろう。

なんか天声人語みたいなことを書いておりますな。。。


ついでにこんな本を紹介したりして。

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…………

ノビルは野趣溢れる味です。たぶん、ノビルを品種改良してアサツキがあったり、何かがあったりするんでしょう。なので、やっぱ、アサツキやニラのほうが美味しいんですよね……。人類の気の遠くなるような努力の果てに、アサツキやらニラがあるんだと思うと、感動的ですらあります。

そういう意味では自然100%万歳とは、なかなか行きませんね……。
 

1 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

山内さんへ
今日、頂いたメールに載ってたブログにお邪魔してます。
ノビル、東京でも食べる人(知ってる人)いるんだなあと。
我が家は毎年、春には近所の野山で、ノビルに、フキノトウに、わらび、山葺に、タケノコ。秋にはあけびに・・・あとなんだっけな、夫は大阪生まれの大阪育ちなのに、とっても自然を楽しめる人で。田舎育ちの私には知らないことをいっぱい知っている。でも、最近は子どももすっかり大きくなって、野山もいかないなあ。
山内さんはどうしてそんなに自然と仲良しなんだろう。