数十年という単位で見れば、世にはベストセラーが溢れ、良書だの、愚書だの、希書だのと、さまざまな本が並んでおります。
編集者として「良い本」を作ること、これは使命でして、何とか読者の方々に、最低限「買って損はなかった」といわれるような本を作りたいと考えております。
そして、あわよくば、と狙うのが「ベストセラー」なのですが、いまのベストセラーというと、20万部、否、10万部くらいでしょうかね。このくらいの数字が出れば、超スゴイ本という感じがします。新書や文庫でさえ初刷り1万もいかない昨今、10万部を越える本を作るのは、かなり難しくなっている現状があります。
10年、いや20年くらい前までは、5万部刷って当たり前、というような時代で、そのころに活躍していた大編集者の方とこないだ酒を飲んだのですが、その方に自らが担当した一番売れた本は何部刷ったかと聞くと、
「300万部だね」
だって仰ってましたよ……。1冊500円としても15億ですよ。おったまげーですよ。
専門書出版社の私としては、10万なんて、夢のまた夢。宣伝費もない、メディアリミックス?はあ、何ソレ?というような状況にいる多くの編集者にとっても、10万というのは一つの壁であり、一度くらいはそのくらい多くの本が出たらいいなあ、と思うような「夢の中の女」みたいなもんですかね。
というわけで、ツキもない、コネもない、カネもない平凡な編集者が次に求めるのは、奇書、珍書のたぐいではないかと思うわけです。
珍書・奇書が多いのは、私の勝手な想像では、自由国民社と国書刊行会の2社。勝手な思い込みです。すいません。
さすが自由国民社さんには、
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なんて本あります。
片や、図書刊行会さまには、
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なんて本があり。
これらは入り口ですからね。入り口でさえ、こうなのですから、両社の書棚の奥に潜むめくるめく奇書・珍書の世界を彷彿とさせます。
で、こないだ、すごい奇書を見つけたわけです。
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とはいえ、まあ、山と渓谷社なんですけれどね。ここもときどき、妙な本がある会社です。
イメージ的には、「くう・ねる・あそぶ」という車のコピー(by 糸井重里)が連想されますが、まあ、タイトルはそこからきているんでしょう。でも、一つ、よくわからない。本書のオビの惹句には、「21世紀の奇書誕生!」なんて書いてあるので、ひかれて買ったわけですが、これが、、、なんと、野糞の本。「野糞礼讃」というような一書なわけです。
「なぜ、著者がライフワークとして野糞を企図するに至ったか? 迫り来る抱腹絶倒の試練。ついにたどりついた世界初!ウンコ掘り返し調査の全貌と、世界でもっとも本気にウンコとつきあっている男のライフヒストリーを通して、ポスト・エコロジー時代への強烈な問題提起となる記念碑的奇書。ついに、刊行!」
と出版社からの紹介にありますが、本当に間違いなく、この著者は、世界でももっとも本気にウンコとつきあっている。はっきり言ってしまえば、変人・奇人さんです。内容はクソ真面目でありまして、ただ、クソについてそんなにクソ真面目に考えなくてもいいじゃんという辺りがどうも変人さんというか、奇人さんというか。親戚のオジサンにこういう方がいてもいいけど、自分の親だと困るなあ、というような、そんな感じもしますが、でも、はっきり言って、この本はすごい。だって、21世紀に入ってから、野糞しかしていないというのですよ。奇人さんが書いた間違いのない奇書です。オススメします。奇書認定。
それまで糞尿譚といえば、安岡章太郎編による
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がその至宝であったかと思うのですが、いや、これははるかに高みに立っています。夢想家よりも実践家を尊ぶ奇書ならではの世界がここにあります。
奇書を作るには、きっと、奇人さんを見つけてくればいいのでしょうが、奇人さんはやはりなかなかおりません。
「私ってちょっと変わっているし」というくらいじゃダメですよね。
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なんていう本があり、奇人さんをいろいろと見せてくれていますが、読んでいる限りでは、精神疾患の方が多い感じがし、それを見下して楽しんでいるようなところもあり、なんていうのか、胸糞が悪い。
奇書を出すのも、なかなか難しいものがあります。
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