遠見書房のメルマガ

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2011年11月28日月曜日

出版反省記

 
いい本なのに売れない。

ということは,これは,私の力不足なのか,あるいはコンセプトがおかしかったのか。あるいは,私が盲目であったということなのか。

栗原和彦先生の本である。『心理臨床家の個人開業』



この在庫がまだずいぶんと残ってしまっている。分厚い本だから,また目立つのである。

遠見書房主としては,この本は1年くらいで増刷するだろうと見込んでいた。遅くとも2年でどうにかなるだろうと。高い本であるが,1000部刷った。高いが,ページ単価としては安いと思う。勝算は当然あった。面白いからだ
遠見書房の本は,はっきり言って,面白い本ばかりである。本当に申し訳ないくらい面白い本がそろっていると思う。いや,ほんと,そうです。
とはいえ,限定的な面白さであることは否めない。すべての心の専門家といった想定する遠見書房の読者層が読んで,全員が面白いとは言ってくれそうにない。そういう意味の「限定的」である。
確かに,『心理臨床家の個人開業』は,限定的な本である。「開業」の本である。「心理臨床家」と限定している。「家」がつくと,どうも高尚な感じになってしまうところもある。読む人は一部に限られるかもしれない。

でも,面白いんだがなあ。

でも,刷った本の半分以上が残ってしまっている。返品はさほど多いわけではないが,追加注文が多くない。高いから避けられているのかもしれない。アマゾンでの注文も寂しい。来年度,教科書採用などにすると,臨床の所作などがわかっていいと思うのだが,学生さんにとれば,馬鹿高の本であり,なかなか難しいかもしれない。

遠見書房の本は,刷って半年で,半分以上がなくなる。今までのどの本もそうであった。それだと,なんとか3年くらいで在庫がなくなる(たぶん)。そういう計算になっている。だいたい計算どおりだ。
けれど,今回は,非常事態である。やばい。

どうして,こうなってしまったのだろうか? と,うずたかく積まれた在庫の山を見て,考えた。以下,反省。


1)タイトルが高尚すぎた
これは,先に書いた。でも,びしっと決まったいいタイトルだとも思う。

2)値段が高い
確かに高い。でも,専門書としては,良心的な値段だとは思う。

3)字ばかりだ
確かに字ばかりだ。ぎゅうぎゅうに文字が詰まっている。でも,レイアウトもいろいろと工夫して,読みにくくはない。(と,こないだの「臨床心理学」誌に書評があった。(信田先生,素晴らしい書評をありがとうございます))

4)重い
2冊分冊にするべきだったか,とも思う。でも,1冊で4600円と,2冊で6400円,どちらがいいだろうか? 出版社的には後者かもしれないけど。

5)著者に敵が多い?
と,ご本人も仰っている。ま,そうかもしれない。とはいえ,遠見書房主だって,敵が多い。というか,遠見書房の著者には,ヒトクセもフタクセもある方が多い気もしてきた。私はいたってノーマルなのに。

6)時期が悪かった
刊行は東日本震災から2カ月くらいのところだった。高い本を買う気分じゃないかもしれない。ましてや,「開業」どころの話じゃないかもしれない。

7)カバー
カバーとオビはよくできたと思う。オビのコピーは,ちょっと自己愛的だったかも。私の作ですが。
でも,ソフトカバーという選択もあったかもしれない。

8)本当はいい本じゃない
というわけはない。さすがに,それはないだろう。。。

9)個人開業のニーズが思ったよりも低い
ということはあるかもしれない。でも,類書がない本はわりに売れることが多い。
そもそも,大学教員の数は決まっていて,公務員や病院常勤も×,SC時給も減収傾向となると,一部のかたがたにとっては,個人開業は収入確保の最良の手段だと思うのですがね。
実は,臨床心理の方を雇って,どうやれば,儲かるんだろう(win-winの関係で)と考えたことがあるんですが,無理でしたね。中間搾取すると,美味しくなくなります,お互いに。
そういう意味では,個人開業は,心理臨床家にとって,ほとんど唯一の,優れたビジネスモデルだと思う。覚悟は必要ですが。
とはいえ,開業を考えない方にも,この本は面白いです。


と,まあ,わざわざ実名をあげてしまうのは,情けにすがって,買ってはくださらないかと思うからであります。
いい本です。買って後悔することはないと思います。ぜひ。

3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

買いました。いい本と思います。
なぜ売れないのでしょうね。
ちなみに私はかなり書籍に金をつぎ込んでいるほうです。マニアックな変わり者と自負しております。

また、私は心理の人間ではありませんが、
医療関係のコ・メディカルです。
同僚が開業したりします。
自分の近い将来‥などと考えていますが。

匿名 さんのコメント...

追伸です。


「個人開業」としたのが今の開業の仕方にマッチしなかった?のかななどと考えてみました。

遠見書房主 さんのコメント...

匿名さま

遠見書房主です。

コメント,ありがとうございました。
いい本とのこと,嬉しいです。
「開業」,頑張ってください。コ・メディカルで,開業が多いというのは,何なのでしょう,気になります。
薬剤師の方?
歯科技工士の方?
理学療法士で,柔道整復師資格もお持ちだとか。

ともあれ,栗原先生の本ですが,現在もコツコツと売れておりまして,半分以上売り切りました。