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2010年3月10日水曜日

学校現場での発達障害のガイドラインを作ろう!

 
と,まあ,私が言うのもおかしいですが,実は,過日,とある方から,遠見書房に電話が入りまして,小社の「夏休みで変わる ADHDを持つ子どものための支援プログラム」の本がほしい,とおっしゃるのですね。「了解,早速手配します」と連絡先などメモをとっていると,自分のお子さんのことを話されはじめました。けっこう,どうして本がほしいのか,問わず語りに話される方は多いです。当然,当事者や家族の方が多いわけですが。私としても,「はあ,そうですか,,大変ですねえ」としか言いようがないのですが,そっと伺っております。
そのお子さんは小学校6年生だそうですが,どうも,PDDだという診断に「なりそうだ」というのですね。「なりそうだ」というと,どういうことかわからないので,詳しく聞いてみると,

1)小さな頃から,目が合わなかったり,言葉の遅れがあったり,ちょっと変わった子だといわれてきた。
2)なので,小学校に入ってからも,市の教育相談の相談室で,たびたび相談をしてきた。学校ではほとんど「お客様状態」だった。
3)そこで,小五のときに心理テストを受けたところ,「自閉症傾向があるが,さほど心配するほどではない。お母さんもしっかりされているし,今のままうまく育ててください」と言われた。ちょっと安心した。
4)ところが,小6になって,突然担任の先生から「特別支援クラスに変わってほしい」「お子さんは自閉症だと思う」「心理テストを受けろ」と言われ,また心理テストを受けたところ,「自閉症だ。特別支援クラスに入ったほうがいい」と言われた。
5)で,現在,特別支援クラスにいる。

というのです。

遠見書房としては問題がありまして,PDDだというのでは,「夏休みで変わる ADHDを持つ子どものための支援プログラム」は不適用なのですね。この本は,ADHDの子ども向けの本です。PDDではどうもこのプログラムだとうまくいかならしい。PDDとADHDは,スペクトラムが違うというのが最近の説でありますし,事例などを見ていても,あるいは社会適応している両者の方々を見ても,やはり,ずいぶんと違います。
なので,「この本はご注文いただきましたが,PDDの方には使えませんおで,送りませんね」などと,泣く泣くメモを消去するわけですね,私は。

それとともに,うーん,なんだろうな,腹が立ってくるわけです。自閉傾向があって,お客様状態で,でも,まあ,普通学級に通っていた子が,何で,最初の心理テストをうけて,「まあ,大丈夫」といわれて,1年たったときに,すぐさま特別支援クラスに行くような状態に,変わるのか?? ブレすぎじゃないか!!
もちろん,10歳前後の,プレ思春期の,微妙な年代にさしかかったことはわかります。担任の先生が変わると,学級経営の方針が変わり,その子を支えきれなくなることもわかります。それから,別に普通学級がベストというわけではないこともわかっています。というか,この子の場合,本来ならば,早めに訓練を開始したほうがいいんじゃなかったのかとも思うわけですね。それに,同じテスターがアセスメントをしたのじゃないのかもしれません。担任の先生の個人的な事情もおありでしょう。
でも,思うのは,この子とお母さんがせっかく,リソースの一つを活用しようと思って相談してきたのに,「様子見」を選択した相談者がいる,ということですよ。お母さんは心配をしているのだから(しかもずいぶん昔から),担任の先生を交えた話し合いをしてみるなり,地域の医師の診断を求めるなり,もうちょっと社会的なケアができてもよかったのにな,と思うわけです。
それから,医療診断を受けることもなぜに勧めていないのか? お母さんから伺ったのですが,すでに子どもが特別支援クラスに入っているのに,まだ,診断を受けていない。なんか,そういうことってありうるわけですか? 診断を受けることで,リソースをいろいろと活用する可能性が広がると思うのですがね。

様子見というのが有益になる場合も多いかと思いますが,発達障害の子どもにおいては,様子見は害になることのほうが多いのではないでしょうか。自閉症スペクトラムにおいては,社会性の問題が多いわけですから,その社会性の獲得する時期に,その自閉症的な個性にそった養育指導・学習が必要なるハズで,10歳前後における,1年もの様子見は,その指導と学習の機会を奪うことにつながるように思えます。この辺りは素人考えにすぎません。間違っていたらお許しください。

で,問題は,その様子見をした「相談員」ですよ。心理テストを操っている?ことからみると,臨床心理士であるかもしれません。発達心理士でもあるかもしれません。心理テストの内容もわからないので,もしかしたら,教員のOBというような立場の人かもしれません。が,ともあれ,専門家とされる方が,ちゃんとしたリソースになりえていない。これは問題です。ある意味で,抱えきれないと特別支援クラス行きを願った担任の先生のほうが,ちゃんと対応している。。皮肉にも,です。


ともあれですね,学校臨床においては,こうした発達障害の相談については,ガイドラインを作るべきじゃないかな,と強く思った次第です。「うちの子,発達障害じゃないかしら」とは,多くの親が心配することです。的中であっても,杞憂であっても,そういう申し出があったら,発達障害が否かをアセスメントし,それから,親の様子も調べ(第四の発達障害というのもありますし),そして,学校の教員や医療関係者らとも協働しながら,その子に見合った教育なり,ケアなりをしていくことがベターではないかと思います。
そして,これを全国一律(これ,大事っす)で進めるためにも,ガイドライン作りが必要になるのではないかと思います。特に,発達障害やら自傷行為やらネット中傷やらモンペアやらという「新参問題群」が現れたときには,それなりに迅速に対応できるようガイドライン,なんかあるといいのに。なんかそういうのを作っていくシステムが必要なのになあ。

…………
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過日。といったことを,大酔っ払いして,SC業界の大将である,某先生にぶーぶー言ってしまった次第です。


というわけで,ご賛同いただける方がありましたら,遠見書房・山内までご連絡ください。



 

2 件のコメント:

T.Y. さんのコメント...

賛成です。

私は以前、某市の保健福祉センターに配置されていた家庭児童相談室に勤務していました。子どもの相談はなんでも受け付けますが、最近の傾向として1歳半、3歳児検診で要フォローと言われた子どもとその親と関わることが多かったです。

私も様子見ではなく、早期に児童相談所と医療機関等に紹介していました。紹介はしても親によってはもうちょっと様子を見るといわれることもありました。子どもに障害があるかもしれないと思った時の衝撃に圧倒される方もいますし、その後の気持ちの揺れもありますし…。そのあたりは続けて相談に来られたら、その気持ちに沿ってタイミングを見て再度促すこともありました。

また、児童精神科医が少なく、医療機関は予約をしても診察は半年後、児童相談所(療育手帳等発行します)での発達検査はもう少し早いですが、概ね3ヶ月後でした。

都市部でこういう状況なので、地方ではもっと社会資源が少ないと思います。だから、紹介したくてもするところがないのかもしれません。

相談員のスキルには本当に差があるのも事実でしょうね。私の周りは熱心な相談員が多かったですが、立場は非常勤嘱託職員で、正職員でこういう仕事をしている人はいなかったと思います。

afcp さんのコメント...

全国一律…は理想かもしれませんが、利用できるリソースが地域によってあまりにも違います。
医療機関の数や待機期間、母子通園の整備状況、通級や特別支援学級の状況や教育センターの機能などあまりにもばらついています。自分は同じ県内のこどもでも市町村によって対応を変えています。ましてや全国では…。
どんなにリソースを整備しても、北海道と東京で同じガイドラインが通用するとも思えませんし、都道府県ごとくらいの単位で、整備するのが現実的かなと思います。