……と,いきなり,わけのわからない表題かもしれませんが,これ,「回文」であります。
先日,遠見書房主の同居人の思い出の絵本「つつみがみつつ」が某所より発見されたのですね。
「つつみがみつつ」というのは,土屋耕一作,たざわしげる 絵の,絵本。否,絵本というか,「こどものとも」226号ですね。1975年の発行のようです(なんて書くと齢がバレますな)。この「つつみがみつつ」(包みが三つ)というタイトルでわかるように,この絵本,全ての文章が「回文」になっている,という奇ッ怪な絵本でありまして,たざわさんの絵とともに,なんだか,風変わりな作品となっております。
古本でも希少なようで(価値があるかはわかりませんが),アマゾンでは取り扱いがありません。
せめて,絵の画像だけでも……
で,まあ,この作品は,回文によって物語が進行する,というか,回文を無理やりつなげたところに物語が生まれている,というか。なんて書くと,ネガティヴな言い方をしているようですが,この絵本,なんか妙に面白いのですね。
で,この表題
「シナモンパンもレモンパンもなし」
というのは,この本のなかに出てくる回文でありまして,
「手伝うよ いつでも どんな用だって」
だとか
「お買い得 安いと 椅子屋 くどい顔」
なんていう力作もあったりします。
というわりには,
「タイツについた」
「二回目 いかに」
などと,尻の穴がへこみそうな回文もあったりして。
妙に喜んでしまったのですが,2歳半になる子どもも妙に喜んでおりました。
結局,その絵本は発見場所に置いてきてしまったのですが,その翌日になって,ウチの子どもが,
「二回目 いかに」
「わかいかわ」
などとつぶやくのですね。トートツに。
普段は,取り立てて,言語の発達が優れたような感じはしないのですが,回文を言い出す。ナゾ。
当然,回文の意味なんてわかっていないわけです。上から読んでも下から読んでも,などとはわかっていない。
でも,そんな子どもにとっても,「音」が面白いんでしょうね。同じ音が続きますから,耳心地がいいのかもしれません。
それに加えて,大人が面白いのは,回文のもつ技巧性でしょうか。うまい洒落を聞いているようなセンスと,関心するような言語能力がすごい回文制作者にはあるようです。
シナモンパンもレモンパンもなし
なんて,中心にあるのが「レ」ですよ。なんか,すごくないですか。カタカナだし。
それと,ナンセンスさ,でしょうか。否,ナンセンスという言葉だけではくくれない,物語性-非物語性の二面性を内包しているところが面白のかもしれません。
たとえば,「二回目 いかに」という回文。唐突に,この文章は,2回目から始まっているわけです。でも,「いかに」ですから,きっと,1回目は,あまり期待にそぐわない結果になったのではないかと,類推される。もっと言ってしまうと,1回目は手ひどい失敗だったのではないかという気もする。――という物語があるわけです。
でも,それは物語があると同時に,物語でもなんでもない言葉の羅列だったりもする。正直,唐突すぎますからね。何が2回目なのか。10回目とか,55回目が約束されたうちの2回目なのか。それとも,単純作業の繰り返しのショッパナの2回目なのか。まったくわからない。もちろん,何の2回目なのかも,さっぱりです。
で,私たちは,回文を前にして言うわけです,「無理やりじゃん」というのと,「うまいじゃん」というのを。
なんて感じで,昨日から,回文ばっか作っている私でございました。
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