遠見書房のメルマガ

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2009年7月29日水曜日

開業したいという若い心理のひとと酒を飲んだ

 
ま、とある酒宴の席と思ってください。たまたま近くに座った心理の若い──とはいえ、30歳そこそこか──方と、起業について話が及んだ。
その方は、ありがたくも、遠見書房のことを知ってくれており、私のこともご存知のようで、「開業したいんですよね、私も」とおっしゃった。
「起業する秘訣は何でしょうか?」
と聞かれたが、まだまだ3冊しか本を出していないような、創業1年にも満たない者に聞いても仕方がないと思い、結果的に(ほかの人が入ってきたとかいろいろな要因などがあり)、はぐらかしてしまった。
すいません。

治療者と開業の問題は、医師に限らず、医療分野の専門職の方は考えられることだろう。
臨床心理の方の開業も増えているらしい。
臨床心理士会の幹部クラスの方々と話していても、けっこう、話題になる。特に、若い心理職の開業が増えているのだそうだ。仕事がなく、やむをえず、という面もあるという。SCなどの仕事を軸にしているものの、それだけでは週の曜日が仕事で埋まらないのでオフィスを構えようとしているんだそうな。

酒宴の席の方は、そこまでは若くはない。開業セラピストの雄 吉川悟先生は、いろいろな状況もあったのだが、「所長」になったのは、私の記憶によれば二十代の後半とかであり、それを考えると、30歳+αであれば、無茶という感じではない。もちろん、やむをえず、という感じではなく、自分の師匠たちが開業しているので、私も自然に開業したいと思うようになった、ということらしいし。

でもまあ、話はかなり中途なところで終わってしまったのだが、帰りの電車のなかでいろいろと考えてみた。

起業すること自体はとても簡単である。心理開業だったら個人事業主で十分であろうから、青色申告をするならば税務署に申し込めば、白色申告でいいのならば申し込まなくても、それで済む。できれば、個人事業主届というものを出しておいたほうがいい。というのも、銀行口座などを作る必要があり、屋号で口座を作る時に、届けのコピーがあると話が早いからである。ともあれ、この口座と届けがあれば、すぐにでも起業は可能だ。2時間もあればできてしまう。判子を屋号にしたいのならば、社判的なものを作る必要があるが、柘植か何かの、安い材料であれば、1万円もかからずできるであろう。

ま、でも、継続は大変だと思う。3年やれれば──他に競合他社が現れれば別だが──その後も続きそうだが、実際問題として3年しのぐのは大変だろうと思う。

第1に,客筋を掴む必要があるだろう。これはコネがいる。あちこちで広告を出したり、HPを充実させたり、本などで名前を出したりしなければ、不意のお客などが開業心理のところにこないように思う。マス媒体への広告は専門性の高い媒体がない以上(クライエントが読む雑誌なんてないし)、対費用効果は低いだろう。現代においてはHP的なものは必要だろうが、それがあったからといってお客が増えるわけではない。電話番号があるからと言ってお客が増えるわけではないのと同じだ。となると、結局は、コネだ。お客を紹介してもらうしかない。
SCなどの稼ぎがあろうと、やはり、賃料や光熱費だというような経費は稼ぎたいであろうから、コネを充実させる必要がある。

ま、このあたりは、それなりに皆さん切実に考えておられるだろうが、実際に開業した後、今まで他の関係性で付き合ってきた人たちが同じように付き合ってくれるとは限らないことをあらかじめ考えに入れておいたほうがガッカリしない。

第2に、けっこう大事なのが、事務能力である。
個人事業主にしろ、法人にしろ、帳簿というものが必要になる。帳簿さえつければ、ある意味でとても「おいしい」思いも味わえる。要するに、「経費で落とす」という奴ですね。でも、これは帳簿をつけないと出来ない。帳簿をつければ、たとえば今までは私費で行っていた学会や勉強会も経費にできる。もちろん、自分が払っているのには変わりないのだが、税金(所得が減るので,かかる税金が減る)がその分減り、そこは得である。
とはいえ、帳簿をつけるというのは、困難ではないが、面倒な作業である。申告の前(毎年2月~3月)にちょいちょいとやればいいや、という人もあるが、毎月か、2カ月に一度か、それなりに頻繁にやったほうがいいと思う。というのも、赤字が出た場合に、対処がしやすいからである。オフィスが自宅兼用で賃料などが不要であり、固定費がかからない場合ならばどんぶり勘定でもOKだが、賃貸で借りている場合は細かく把握しておいた方がいいように思う。耐え切れぬような赤字が続くようならば、賃貸契約を解除するなど経営を立て直した方がいいだろう。
とにかく、帳簿はつけたほうがいい。PCでやるのだから、面倒ではあるが、大変ではない。
この手の事務仕事を人に任せるということもあるだろう。もちろん、できること、できないことがあるが、数年は自分でいろいろとやってみた方がいいと思う。その方が経営的なスキルがあがるからだ。

とかいうと、私がとても事務能力のある人間かと思われるかもしれないが、そんなことはないのでありますが、慣れますね、慣れます。オジサンでもなんにでもなれるんだ,とポエムのようなことを思います。


それと、もう一つ必要だなあ、と日々思うのが、現代では事務能力とほぼ同義語なのかもしれませんが、PCの能力であります。情報収集能力ともいいましょうか。あるいは、あちこちのソフトを統合する能力といいましょうか。

わかりにくいかもしれないが、たとえば、心理面接オフィスだと、1)顧客管理用の電子カルテのようなもの、2)領収書などの発行、3)帳簿、4)スケジュール管理帳──などなどが必要になる。これらを一つのソフトでやるのはなかなか大変だが(アクセスやファイルメーカーなどを使うとできそう。ただ、帳簿は同じシステムではなく、別で動くシステムにしたほうがいいらしい。ファイルが壊れると怖いから)、いくつかのソフトを使えば、さほど難しくはない。
フリーソフトも充実しているから、そういうものを使えば経費削減にもなる。
実際、PCに強くなくても、調べられる能力があれば、「へえ、こういう仕事をこのソフトがしてくれるのか」ということがわかる。無駄な手作業をなんでまたやっていたのだ,とウツになることもあるが,ソフトを使いこなせると,自分が軍師にでもなったような気分になれる。


4つめに大事なのが──と考えていたのだが、これがなかなかまとまらない。という話もあるし、愛嬌なんていうわけのわからない要素も大事そうだし(松下幸之助のパクリです)、根性勇気努力という少年ジャンプが好きそうなテーマも大事そうだ。体力というのはこれは大事であるが、オチである3つめにするのも、気が引ける。酒が飲めるというのは、これは大事なことではあるが、別に飲めなくても無問題だ。専門的なスキルなんかは大前提だし、向学心好奇心というのもあったほうがいいけれど,これも大前提だろう。開業者は,(政治信条という意味ではないが)コンサバよりもラディカルなほうが向いているとも思う。いろいろと考えてしまうのだが、結局やはり思うのが、コネである。
1と一緒じゃん、なのだが、やはり、コネ。人は人に支えられて生きているんだなあ。ここのところ、としみじみと感じております。コネは大事超大事
 

ま、開業ですが、日銭の入る商売ですから、心理開業自体はとても経営的には楽じゃないかな、と思います。売掛金の回収に頭を痛めるところですから。しかも、仕入れや製造などの資本投下は不要なわけで(高等教育がそれに当たるのかも)、純粋に固定費のみがのしかかるわけです。もちろん,1時間につき幾らという売上げになり,対人サービスですので,これが3倍にも4倍にもなることはまずありませんが,固定費のみに気をつければ,開業専業でなければ分は悪くないかな,と思いますが,コネがなければどうにもなりませんし,不安定さは残念ながら否めません。
共同オフィスにしたり、自宅兼用にしたりと、売り上げメドがつかないうちは、固定費をいかに圧縮するか、ということが開業における経営戦略のポイントではないかと思います。とはいえ、家賃4万のアパートにある安いオフィスにお客さんがくるか、というと、これはまた難しい。
競合他社がきたら……というと、また難しいですね。コネだけでも商売が続かないのならば,専門性をウリにするしかないでしょうね、××療法だとか、××障害に強いとか……。

起業関係の本は,立ち読みで十分です。「覚悟があるならヤレ」としか書いてありません。あるいはネットの検索でも。この手の本は,さほど重要なことは書いておりません。ただ知らないとバカを見ることもありますので,何冊か立ち読みしたり,ネットを何日も検索し続けたり,ということが必要でしょう。
ただ,申告時期が先でも,税務申告の手引きのような本を読んでおけばよかった,といまは思います。法人化や個人開業届の出し方についての具体的な情報もけっこう載っていますので。

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