遠見書房のメルマガ

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2009年7月13日月曜日

編集者になりたい!

  
時折、「出版社に入りたいという学生がいるんだが」と、大学教員をされている方からメールをもらうことがあります。身近に出版社に勤めているものが私くらいしかおられないからか、ご連絡をいただくのです。
それは、おたくの会社で募集をしていないかとか、コネはないか、といった類のものであったり、あるいは単に、出版社に入るためにはどうしたらいいのか、という質問だったりします。
大きく大別すると、
1)出版社に入るためには、どうしたらいいのか?
2)編集者に向いているタイプというのはあるのか?
といったところでしょうか。
ま,私が言うのもなんなのですが,ちょっと解説しておきましょう。

1)出版社に入るためには?
出版社社員募集というのは、ふつうの会社と同様、定期的に募集をしている会社もありますが、多くは不定期です。そもそも出版社というのは大きい就業人数のある企業ではありません。多くて千人。千人クラスの会社は数社でしょうか。とても有名な会社でも100人、否、20人もいないような会社だったりします。
定期的に募集をしている会社でも、年によっては違いますが、募集は数名程度。そもそも、定期的に募集をしている会社は、出版社のなかのほんの十数社じゃないかと思います。
大きい会社ですと、就職票みたいなものがきたりしますが、出版社の多くは、ネットか、朝日新聞で求人をかけているのではないかと思います。これはほぼ朝日新聞に限定されていて、ボーナス前後になると人が辞めるのでそのころの日曜日の求人欄にはずらずらと募集が出ていたりします。ネットでも朝日新聞のサイトから検索できるようです。
「どうやって出版社に入るのか」と聞かれることが多いのですが、こういうのをみて、履歴書を送る、としか言えません。以降は縁の世界。履歴書が返ってこず連絡もないようなこともありますし、すぐに面接をして決まるということもあるでしょう。

心理の本を作る場合は専攻が関係あるのか、と聞かれることもありますが、基本的には関係がない、と思います。同分野の出版社で心理学を専攻していた編集者も何人かおられますが、ほとんどは別分野の専攻です。ただ、専門書の場合ですと、卒論などにおいて論文作法や研究の心構えについて詳しく教わった経験のある編集者のほうが、飲み込みが早いような気がします。

さて、出版関係の会社と言っても、「出版社」「編集プロダクション(編プロ)」「印刷会社」などなどと分かれています。ときどき、「出版社に入れなかったので印刷にいきました」という方がおられますが、出版社と印刷業はやはり大きく違います。同じように、編プロと出版社も違います。編プロというのは下請けです。制作をメインにしています。要するに、割付やレイアウトですね。印刷業でも会社によっては割付やレイアウトに力を入れている会社もあります。
編集職という仕事はとても広い仕事で、筆者の方との打ち合わせやお付き合い(接待)、原稿トリなどからレイアウトや校正、企画、印刷屋さんとの打ち合わせや制作の進行管理などなど雑務の固まりのような仕事です。出版社の編集者といった場合、会社によっては接待と企画のみ、みたいな会社もありますし、小さいところですと、すべてを(時にはカバーデザインまで)やる場合もあります。編プロのスタッフも編集職ですが、筆者との打ち合わせはあまりないようで、レイアウトや校正がメインだったりするようです。
求人広告ですと、同じ「編集」ということで募集がされておりますが、会社によって仕事が異なるので、その辺りはしっかりと聞いておいたほうが無難かなと思います。
ただ、出版社は、中途採用をすることが多く、つまりは「経験者優遇」ということが多く、まずは潜り込め、と個人的には思います。小さい会社のほうがいろいろと学べるとは思いますが、大きい会社のほうが面白い仕事は多いかもしれません……とはいえ、つまらない仕事も多いかもしれませんが、それは運ですかね。

また、出版社には編集部との両輪である営業部という部門があります。商品管理や広告宣伝、書店さんへの販売促進活動などを行う部門です。営業は営業でとても面白い仕事です。

ともあれ、求人広告をみて、あちこちに履歴書を送ればよい、ということです。

2)編集者に向いているタイプというのはあるのか?
時に、「どんな人が向いていますか」と聞かれることがあります。ですが、どんな人でも向いています、と答えるしかありません。というのは、先ほど「縁」だと言いましたが、誠にその通りで、出版社はとても人数の少ない企業なので、多くの場合、だれかが抜けるからだれかを入れる、と言ったパターンで人を入れてゆきます。人員拡充ではなく、人材補充って奴ですね。たとえば、Aという部署に人を入れたい、といった目論みがハナからあり、募集をかける。その部署に聞くと、女性がいい、三十歳くらいがいい、などとニーズがあったりする。しかし、女性のみとも、三十歳までとも、法律違反らしく,求人広告に打てないので、結局、履歴書がきてから落とすことになる。要するに、求人者の能力とは別の次元で決まっていたりするわけです。
要するに「こういう人が向いている」とは一概には決まっていないのです。これはどんな企業でも同じでしょう。
明るい人がいいという場合もあれば、さほど明るくなくても仕事を丁寧にやれる人がほしい場合もある。人付き合いはしないポジションなので、その点はまったく気にしないといったこともあります。その次の募集のときには,真逆のひとがほしかったりします。これはまったくもって縁でしょう。

とはいえ、専門書編集者の場合、と限定するならば、まず、第一に
「本が好き」
というのが大事になります。
「本が好き」というのは、まあ、何ともアバウトな言い様ですが、出版社に入って編集者になりたいという大学生諸君であれば、一カ月で10冊くらいは読破してほしい。これは専門書出版社には限りませんが。最低ラインとして,年に120冊くらいは読むくらいの人材がほしい、と思います。あくまでも、これは最低レベルです。マンガを入れれば、その3倍くらいの冊数を読んでいてもいいかもしれません。内容は問いませんが、ラノベだけとか、実用書だけとか、そういうのはヤメにして、手当たり次第に読むことをオススメします。「本が好き」というのであれば、その倍くらい読んでいてもおかしくないですし、そのくらい好きじゃないと、仕事としては続かないかな、と思います。
編集者の仕事は、読むこと、書くこと(メールのやりとりは大きい仕事です)、考えること(企画など)、人に会うこと(接待)、などで成り立っています。
そのなかで比重が大きいのは「読むこと」です。読む能力がしっかりとついていれば、本の内容が専門的であれ、マニアックであれ、理解は進みますし、興味を持つようにもなります。

編集者は、人と会うことも仕事です。実際には配属されるポジションにもよるのですが、基本的には人と会うことを厭わない性格のほうが、編集者には向いているでしょう。というか、たいていの第三次的職業人は、人と会うことが好きな人のほうが楽に職業人生を送れるのではないかと思います。
これは簡単に言えば、①親友と呼べる同世代の友人が一人以上いる、②恋人と呼べる間柄の特定の他者がいる/いたことがある、という2点に絞れます。
「この人、どうかな……」と思う人は、たいてい①がいないことが多かったり、けっこうな適齢期になっても②がなかったり。不適応を起こすタイプには、女性には①が多く、男性には②が多いような気がしますが、病理学的にはどうでしょうか。ま,要するにふつうに青春しておけ,という話です。
①と②をクリアしていれば、まあ、ふつうにだれとでも付き合えるのではないかと思います。そうであれば、著者の先生たちとも一緒に仕事ができるでしょう。もちろん、合う合わないはあります。関係性が最悪になって、破綻する執筆者‐編集者関係ということもあります。

酒は飲めるほうがいいでしょうが、無理してまで飲む必要はありません。とはいえ、不思議と年をとると酒が強くなります。脳が慣れてきた(鈍感になった)せいだという説を聞いたことがありますが、これは本当でしょうか。。。
それと、酒を飲む時のエチケットというか、マナーというか、お酌をするとか、人に適度にすすめるとか、そういうのは大事でしょう。

そして、一番大事なのは、体力でしょうか。胆力というか。ま、どんな仕事もそうですが。




そうそう、教官によるコネってまずありませんので注意してください。ほとんどは中小企業で、社員数は多くないですからね、えらい先生が口利きをしてくれる、というのでもまず難しいかと思います。たまたまアルバイトの口が空いていた、という程度でしたら、あるかもしれませんが。それは本当にたまたまです。

編集者は、やりがいもありますし、周囲のスタッフも面白い人間が多いですし、好奇心も満たせますし、たいていはお給金も悪くない仕事です。というわけで、頑張ってみてください。

出版業界の浮沈は,若いひとたちの人材確保にかかっているのではないかと,最近,とある同業者と話していて思うようになりました。
 

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