過日。津川律子先生からご著書をご恵送いただいた。
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である。
心理アセスメントの本として、実に良い本である。私は本をいただくとサクサクと読むのでありますが、やはり読むのは一度であります。しかし、この本の原稿はとてもじっくりと読んでいる。たぶん3度は読んでいる。なので、この「良い本である」というのは、かなり確信を持っていえるわけです。
というのも、この本、「臨床心理学」誌で連載をしていたもので、当時、私は担当であり、入ってくる原稿をすべて読んでいたので3度読むのも当然なのであるが(原稿をいただいたときと、原稿整理のときと、校正時と3回読んでいた。もちろん読む深度は違うが)、いつもいつも、「おもろいなあ」と思っていたものである。基本的,あらゆる患者さんは「可哀想」なのであるから、それを扱う臨床論文に対し、「おもろいなあ」と書いてはいけないのだが、とても面白かった。興味深いというか、「へええ」と驚愕し、「ほほう」と深く首肯したのである。面白いと言っても,げらげら笑えるところはない。
ともあれ,伝説の連載が終焉し、早くも本になった。それがこの本である。「精神科臨床」と銘打ってあるが、これは広く臨床心理援助を行っている皆さんに読んでいただきたい本である。精神科医の方でも、役に立つ情報が多かろうと思う。DSM診断だけではなく、心理学的な見立てというものが必要な場合もあると思うのだが、一読に値するものと思う。
ぜひ、読んでください。保証つきです。
津川先生とは、
電話相談の考え方とその実践 村瀬 嘉代子 津川 律子 金剛出版 2005-09 売り上げランキング : 225260 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
や、
初心者のための臨床心理学研究実践マニュアル 津川 律子 金剛出版 2004-07 売り上げランキング : 213936 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
という本を作ったりした。
電話相談の本は、たぶん、電話相談業界(?)において、とても重要な提言のある本だと思う。村瀬先生の本でもあるので、ぜひ、読んでいただきたい。
研究実践マニュアルの本は、これは私が新入社員に必ず読むように厳命していた本である。論文を書くという作業がどうなっているのか、どう書き進めているのか、どう研究がされているのか、どういうふうに研究が評価されるのか、などなどのノウハウが詰まっている。そもそも、「臨床心理学」誌の投稿欄を管理していときに、くる論文の「頑張ってはいるのだろうけれど、絶対査読が通らない」という、なんというか、哀しい事態に何度も遭遇し、彼らを救う手立てとして、「研究論文を書くノウハウの質」をあげたいと考えていた時に、津川先生と遠藤先生のこのテーマのWSが開かれているのを知り、本にしないかと持ちかけたものであるのです。自分にとっても、とても勉強になった本です。
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これら本も売れているようです。特に,「実習本」のほうは,これは,絶対に院生ならば買うべきものでしょう。やられたなあ,と思わせる本です。
さて、津川先生は、臨床心理士会の副会長である。お忙しい。連載時といい、あるいは、他の本を作っているときといい、とにかく、お忙しいかろうにもかかわらず,メールなどをマメにいただくのだが、このメールが朝の5時だとか、夜中の3時だとか、昼の12時だとか、わけのわからないタイムスタンプが押されてくる。同じ日二つメールをいただき、一通目が夜中の3時のスタンプで、二通目が朝の6時のスタンプであったこともあった。
「この人はいつ寝ているのだろう……」
などと思ってしまうのである。
津川先生をご存知の方に聞くと、皆やはりそう思っているらしい。3人くらいいるんじゃないかという説もあるらしい(嘘です)。
そして日常の臨床の話などを聞いていると、数年前の話だが、週に何回だったか,非常勤先の病院やらクリニックやら大学の相談室やらで働き、そのうえ当然、大学教員のなので授業を受け持ち、いくつかの学会の理事を務め、なんかとてもすごい状況なのであった。この人の前では「忙しい」なんて死んでも言えねえ,と思ったものである。そして、締め切りは絶対に守ってくれるとても素晴らしい先生でありました。
超人ですね。はい。
心理臨床ができる人というのは、何を指してできるのかよくわからないところもある。治せる人がいいというかもしれないが、自閉症などの長いケアの必要なものは治るという観点で語れるものではないし、対費用効果やエビデンスだけでは語れない部分も多い。病院やクリニックや学校など置かれた環境によってもずいぶんと違う。
とはいえ、ある種の心理臨床の優秀さは、やはり経験値がものを言うのであろう。才能もあるし、努力も必要だが、数をこなすというのは、実に重要なスキルトレーニングである。ゆえに、臨床現場から離れてしまった人は、どうしても腕が鈍る。大学で臨床系を教えている方は、自分の腕を維持・向上させるために週に何日くらい臨床をされているものだろうか。
世辞抜きに、臨床能力高そうな臨床家ランキングなどがあったら、私は津川先生を相当上位に推すでしょう。
なので,このアセスメント本は,間違いのない1冊です。
でも、早く寝てくださいね。
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