遠見書房のメルマガ

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2012年4月6日金曜日

とある精神科医の選択

その精神科医は,私と同じ年だった。同じ年だったからか,それなりに話が合い,気が合ったのかもしれない。半年に1度くらい,あちこちで酒を飲んだ。友人というと,少しおかしいかもしれない。でも,すぐさま本を出すというわけでもなかった。ビジネスライクな付き合いでもない。仕事の話もしたし,プライベートな話などしたりもした。親しい人であったことは確かだ。

その彼が東日本震災の被災地で仕事をしようかと思う,と言ったのは,ちょっと前に飲んだときだった。冬になったばかりのことだ。私はなんと答えたろう。酔っていたので覚えていない。

そして,今日,その彼からメールがきた。4月から福島の,震災と放射能の問題で厳しい地域の病院に着任したという。よく聞く地名だ。

何年行くつもりなのだろうか。それとも,骨を埋める覚悟さえあるのだろうか。彼は一人身で,気楽にいけるのかもしれないが,それにしたって,かなりの決断だ。出身は東京で,ずうっと東京近郊で暮らしてきたはずだ。

彼は,全国屈指の中高を出て,全国屈指の大学の医学部に入った(赤い門があるところである)。受験者数が一番多かった時代だ。エリートもいいところである。

そういう人が,こういう選択をした。

言葉もない。
私には真似できそうもない。まあ,編集者が福島に行ったからって,何ができるというわけでもないのだが。

ただただ,尊敬するばかりである。この世界は,こういう人たちに支えられているのだと思う。

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